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感謝のおにぎり 最終話 [創作童話]

感謝のおにぎり文字有.png ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
作品名:感謝のおにぎり 最終話
作品番号:49
原 作:清原 登志雄
校 正:橘 かおる/橘 はやと
イラスト:姫嶋 さくら
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日が上った頃、スズは巡査に連れて行かれました。駐在所へ行く途中、スズは誰かに声をかけられました。
「スズちゃんの家の事は良く知っているよ。おなかが空いただろう、これでもお食べ」
スズが顔を上げると、近所に住むお婆さんでした。とても、親切なお婆さんでしたが、身寄りが無く、毎日、近くの寺にある仏様に手を合わせていました。スズは、お婆さんを見つめると、ゆっくりと頷き、おにぎりを受け取りました。
2週間後、巡査の取り調べが終わり、スズは、やっと家に帰る事を許されました。
「食べ物がわずかしか残っていなかった、どうかおとうが、生きています様に…」
家に帰ると、父は痩せていましたが、何とか生きていました。スズは泣きながら
「おとう、1人にしてごめんね」
「ワシのために、盗みを働いたんだね。すまなかった」
父は、スズを抱きしめました。その時、スズは、ハッと気がつきました。
「近所のお婆さんに、おにぎりをもらったんだ。お婆さんにお礼を言ってくる」
スズはお婆さんの家に行きましたが、お婆さんは、なかなか家から出てきませんでした。何があったのだろう? 近くの人に話を聞いたところ、お婆さんは数日前に亡くなったとの事でした。お婆さんは、身寄りも食べ物も無く、お寺の前で倒れていたそうです。どうも、スズに渡した、おにぎりが最後の米だったようです。
数日後、父とスズは、お婆さんの墓参りに出かけました。スズは手を合わせると、
「村の人達は自分に冷たかったけど、お婆さんだけは違った。ありがとう。お婆さんに仏様の救いがありますように…」
その時、墓の前で
「生きるということは、他の命を犠牲にしているという事なんだよ。自暴自棄にならず生かされている事に感謝して生きていくんだよ」
お婆さんの声が聞こえました。その後、2人はお婆さんの墓の前に、感謝のおにぎりを供えました。墓の近くでは梅の花が咲き、良い香りがしていました。

■ 感謝のおにぎり第1話
http://douwachan02.blog.so-net.ne.jp/2015-04-14

■ 掲載予定 童話制作委員会HP ■
http://douwaseisaku.ie-yasu.com/SAKUHIN-fream.html

感謝のおにぎり 第1話 [創作童話]

感謝のおにぎり文字有.png
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作品名:感謝のおにぎり 第1話
作品番号:49
原 作:清原 登志雄
校 正:橘 かおる/橘 はやと
イラスト:姫嶋 さくら
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昔々、東北地方の山間に貧しい農村がありました。梅の花がつぼみをつけ始めた頃、この村では食べ物がなく村民は困っていました。
この貧しい村に父と娘の親子が住んでいました。娘は幼いころ、母を病で失い、今また、父も病気で寝込んでいました。その病の父の世話を娘が1人でしていました。
「おとう、おかゆが出来たよ、食べてくれ」
差し出されたおかゆを見ながら、父はすまなさそうに、
「スズ、いつも心配ばかりかけてすまないな。ありがとう」
そう言っておかゆをすすりました。その様子をこっそりと、家の外で見つめる、老婆の姿がありました。
数日後、スズの家では、米びつの底が見えてきました。困ったスズは村人にお米を分けてもらえるよう頼んで回りましたが、この季節はどの家も食べ物がありませんでした。
夕日が射す中、スズはうなだれ、家路を歩いていました。庄屋の家の前を通りすぎた時の事です。庄屋さんは立派な着物を着て、息子さんは洋服を着ていました。
家に帰ると、スズは台所に行きましたが、米や野菜はもう2~3日分しか残っていません。スズは、村民から冷たく追い返された悲しみと、庄屋の幸せそうな様子を思い浮かべていました。ぼんやりと、台所に射す夕陽を眺めながら
『いつになったら、この貧しい生活から抜け出せるのだろうか? こんな貧しい自分を必要としてくれる人なんて、この世にいるのだろうか』
翌日の真夜中でした。庄屋の蔵で何か物音がします。庄屋と息子は起き出し、音がする蔵へ近づいてみると、誰かが米を持ち出そうとしていました。
「この、盗人め」
2人が取り押さえると、それは、スズでした。

▲▲▲▲ 2015年4月14日 次回に続く ▲▲▲▲

オリジナル童話【青い鳥がくれた不思議なメール(後編)】最終話 [創作童話]

青い鳥がくれた不思議なメール(後半).png ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
作品名:青い鳥がくれた不思議なメール(後編)最終話
作品番号:48
原 作:清原 登志雄
校 正:橘 かおる/橘 はやと
イラスト:姫嶋 さくら
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すると、再び机がガタガタと揺れ小瓶数本と紙切れが落ちてきました。瓶の中には薬が詰まっています。瓶の横には古ぼけた紙切れもついています。4人は驚きながらその紙切れを開いてみました。紙には、さっき魔法のペンが描いた絵とそっくりの古ぼけた青い鳥のイラストが描かれていました。お父さんは
「不思議だ。古ぼけているが、さっき描いた青い鳥のイラストが入っている」
と信じられない様子です。優奈は
「やっぱり、青い鳥は未来を信じる人の元にやってくるんだね」
そうつぶやきました。和輝が
「青い鳥さんは本当に未来人なんだね。このペンは今の科学じゃ考えられません」
そう青い鳥に返信するとすぐに青い鳥からメールが返ってきました。
「メールに添付した魔法の薬はもう飲んだかな。これはウィリス動脈輪閉症を治す薬だ。すぐに飲んで元気になりなさい。そして明るい未来に向かって頑張りなさい」
和輝はしばらくイラストとメールを見つめていましたが
「これは、未来からきた新しい薬か。このイラストは確かに未来のペンが描いたものと同じだ。確かにこのメールは未来から来たとしか考えられない」
決心して青い鳥がくれた薬を飲んでみました。
ゴクゴク。3人が真剣に見守る中、和輝は薬を飲み終えました。その後、薬を飲んだ後、頭が少しずつすっきりしていくのがわかりました。じょじょに手の震えが収まり引きずっていた足も自由に動き始めました。
『す…すごい。体が自由に動くぞ』
和輝はうれしさのあまり声がでません。家族みんなの顔が輝きました。
「メールの送り主はだれか分からないが本当に未来から来た薬だ。素晴らしい」
「お兄ちゃん、体が直ったんだね!これから毎日、外にでて遊べるね」
家族全員でうれしさのあまり抱き合いました。それから和輝は気がついたようにパソコンに向かってメールを打ちはじめました。
「メールをくれた青い鳥さん、本当にありがとう。青い鳥さんのくれた薬のおかげで体が自由になりました。もし青い鳥さんが未来人であるならあなたの居る未来世界はどうなっているのですか?教えてください」
メールを送ると
「ピンポーン」
すぐに返事が返ってきました。
「大空和輝君へ。体が治ったようだね、おめでとう。僕の居る未来はね…携帯電話がナビ代わりで行き先を案内してくれるんだ。子供達の数は減ってしまったが、今の時代よりお友達を大切にしているよ。遊び相手が少ないからね。人と人とのつながりを本当に大切にしているんだ。そうそう君達が好きなゲームのカードは電子チップが埋め込まれていて触ると音が出る物もある。カードに向かってしゃべると、カードが返事をしてくれるよ。医学はもっと発達しているんだ。いろんな病気が治せるようになっているよ。町中ではお使いロボットが歩いている」
和輝は目を輝かせながら何度も声にだしてメールを読みました。お母さんが
「私たちの未来には青い鳥が待っているのかも知れないね」
そうつぶやくと
「ピンポーン」
青い鳥がメールを送ってきました。
「そんな素晴らしい未来が君たちには待っている。もはや国境もなく大きな戦争もない時代がやってくる。そんな時代で大切な事は、科学の可能性は無限であり道は開けるって事。そして、自分を見失わないこと。愛を持ち希望をもって生きるなら君は素晴らしい大人になれる。そんな素晴らしい君に会えることを期待したい。30年後の未来人より」
和輝はそのメールに向かってつぶやきました。
「ありがとう、僕の青い鳥」
その後、青い鳥からメールが届くことはありませんでした。
それから30年後。和輝は薬の研究者となり新しい薬の研究に追われる日々を送っていました。和輝は科学の可能性を信じて研究を続け、ついにウィリス動脈輪閉塞症を治す薬の発明に成功したのです。その薬が完成し和輝は世界中の人々から偉大な研究者として愛されるようになりました。和輝は自分が幼い頃描いた、古ぼけた青い鳥のイラストを見ながら
「私があのとき、この病で苦しんでいたからこの薬ができたんだ」
そうつぶやき、顔を上げると
「そうだ、まだ青い鳥を待っている過去の自分に薬を渡していなかったな」
笑いながらタイムメーラーの前に座りました。そしてメールの件名に
「人生は素晴らしい、感動することに意義がある」
と打ち、励ましのメッセージを綴りました。
 和輝が偉大な薬の研究者になるためにもっとも必要だったのは、苦しみの中でも未来を信じ続けて生きた事でした。そんな和輝は今日も、どこかでタイムメーラーを使い、病で苦しむ世界中の人々に幸せになれるメールを送り続けています。
「一生懸命に戦う君が生きている今日は世界のどんな記念日よりもすばらしい。幸せを呼ぶ青い鳥は自分の中にいる」
と。

■ 後半 第1話
URL:http://douwachan02.blog.so-net.ne.jp/2015-04-08

■ 後編 第2話
URL:http://douwachan02.blog.so-net.ne.jp/2015-04-09

■ 童話制作委員会 掲載予定HP
URL:http://douwaseisaku.ie-yasu.com/SAKUHIN-fream.html

▲▲▲▲ 2015年4月10日 完結 ▲▲▲▲

オリジナル童話【青い鳥がくれた不思議なメール(後編)】第2話 [創作童話]

青い鳥がくれた不思議なメール(後半).png
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作品名:青い鳥がくれた不思議なメール(後編)第2話
作品番号:48
原 作:清原 登志雄
校 正:橘 かおる/橘 はやと
イラスト:姫嶋 さくら
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みんなただ不思議そうにそのボールペンを見つめています。和輝は
「こ、このボールペンはどこから出てきたんだろう」
そう言って震えながらペンを手に取りました。ペンはずっしりと重く今まで見たこともない形です。すると突然ペンが
「何か描きたい物があればおっしゃってください」
「う…うわ、このペン喋った」
和輝は驚いて思わずペンを落としそうになりました。後ろからのぞき込んでいた優奈が
「お兄ちゃんが幸せになれるような絵を描いて」
すると、突然ペンが勝手に動き始め、ノートに青い鳥の絵を描きました。
「な、なにこれ。ペンが勝手に動いて絵を描いた」
お父さんも驚いて
「突然、パソコンの中からペンが出てきた。こんな不思議な事ってあるのか?」
優奈は不思議そうにペンをみつめて
「ねえ…お兄ちゃん、このペン、別の世界から届いたような気がする」
和輝はすぐに、メールを返信しました。
「アイコンをクリックしたらボールペンが出てきました。本当にすごい!こんなメールは初めてだ。しかも、勝手にペンが動いて絵を描いてくれた。このペンはどこで売っているのですか?」
メールを送信すると
「ピンポーン」
再び青い鳥からメールが届きました。
「私を信用してくれたようだね。アイコンをクリックすると物が届いたと思う。私は、君に未来からメールを送っているんだ。私が誰かは君が希望を持って生き続けるならいずれわかるだろう。そうそう一瞬、部屋が揺れたと思うがあれは時間を超えて物が飛行してくる事によって起こる振動だよ。心配ない。そのボールペンには30年先の技術が使われている。君が口にしたことを描いてくれる魔法のペンだ。大切にしなさい」
和輝は再び青い鳥にメールを送ります。
「青い鳥さんはいつの時代の人なのですか?本当に未来では時間を超えてメールを届ける事ができるのですか?」
メールを出すとすぐに青い鳥から返信メールが届きました。
「未来ではタイムマシーンができあがっている。だから過去にメールの送信や小物を送る事もできる。これをタイムメーラーというんだ。そしてそんな素晴らしい未来を作り上げる主人公は、これから大人になる君たちだよ。だから君には希望を持って生きてほしい。なぜなら苦しみを知っている君たちはこの世の光になれるのだから。さて、瓶のマークのアイコンはクリックしたかな? クリックしていないなら押してみてほしい。素晴らしい事が起こるだろう」
メールを見ると本文の下には瓶と紙切れのアイコンがついていました。和輝は恐る恐る、そのアイコンをクリックしてみました。

■(後編) 第1話 青い鳥がくれた不思議なメール(後編)
http://douwachan02.blog.so-net.ne.jp/2015-04-08

▲▲▲▲ 後編第3話に続く ▲▲▲▲

オリジナル童話【青い鳥がくれた不思議なメール(後編)】第1話 [創作童話]

青い鳥がくれた不思議なメール(後半).png
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作品名:青い鳥がくれた不思議なメール(後編)第1話
作品番号:48
原 作:清原 登志雄
校 正:橘 かおる/橘 はやと
イラスト:姫嶋 さくら
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和輝は部屋をでて足を引きずりながら台所に行きました。
「お父さん。僕のパソコンにメールを送らなかった?」
お父さんは不思議そうに和輝を見つめました。
「メールなんて送っていないぞ。一体どうしたんだ?」
「僕のパソコンに幸せを呼ぶ青い鳥って人からメールが届くんだ。僕の体の事に詳しくて、励ましのメッセージを送ってくれるの」
お父さんとお母さんは顔を見合わせました。青い鳥のメールの話を聞いたお母さんは
「不思議なメールね。青い鳥って一体誰なのかしら?」
3人が考えこんでいると、妹の優奈が台所に入ってきました。優奈は3人の顔を見て
「どうしたの?そんな顔して」
「和輝のパソコンに青い鳥からメールが来たんだって」
優奈は不思議そうに話を聞いていましたが
「青い鳥は、病気の事も私たちの事も知っているんだね。きっとお兄ちゃんの事をよく知っている人だよ。メールをくれる青い鳥に誰なのか聞いてみたら?」
お父さんは、うなっていましたが
「和輝、そのメールをお父さんとお母さんにも見せてほしい」
和輝は部屋に戻り家族に青い鳥からのメールを見せました。すべて読み終えたお父さんは
「お父さんも全然、覚えのない人だ。この青い鳥を名乗っている人は医者かな?…でも誰が?」
「お母さんも知らないわ。本当に不思議ね。まるで私たちのことを昔からずっと知っていたみたい」
と口をそろえて言いました。みんなしばらく考え込んでいましたが青い鳥が誰か分かりません。和輝は再びパソコンに向かい
「幸せを呼ぶ青い鳥さん。僕にメールをくれてありがとう。家族も、みんな貴方が誰か知らないようです。僕にメールを送ってくれる貴方は一体、誰ですか?」
「ピンポーン」
すぐに着信音がなりました。アドレスは青い鳥からです。
「君が人生に希望を持って生き続けると約束するなら、私が誰なのかは必ず分かる時がくる。私を信用してくれるなら下のアイコンをクリックしてごらん。きっと驚くはずだ」
メールの下にはボールペンのアイコンが添付されていました。和輝はおそるおそるアイコンをクリックしてみました。その瞬間机がガタガタとゆれ出しました。
「うわ…地震?」
しかし揺れはすぐに収まり、ポトン。和輝の机の上にはアイコンとそっくりのボールペンが落ちてきました。あっと言う間の出来事に家族全員が口もきけません。

■ (前編)第3話 青い鳥がくれた不思議なメール(前編) ■
URL:http://douwachan02.blog.so-net.ne.jp/2015-03-29

▲▲▲▲ 後編第2話に続く ▲▲▲▲

オリジナル童話【青い鳥がくれた不思議なメール(前編)】第3話 [創作童話]

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作品名:青い鳥がくれた不思議なメール(前編)第3話
作品番号:47
原 作:清原 登志雄
校 正:橘 かおる/橘 はやと
イラスト:姫嶋 さくら
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数ヶ月ぶりの外出で体中に夕日を浴びた和輝は何故か肌が痛く感じました。
「青い鳥が来てないかな?」
和輝は足を引きずりながら庭を少し歩いてみました。塀の向こう側から知らないおじさんが歩いてきます。そして足を引きずって歩く和輝の姿をチラと見ました。
『うわ、見られた。やっぱり誰かに見られるのは嫌だな』
和輝は庭をひと回りし青い鳥が来ていないことを確かめるとそのまま逃げるように家の中へ入って行きました。玄関の戸をしめると
「久しぶりに外に出て日を浴びた。やっぱりみんな自分を馬鹿にしているようだ。なんだか、いやだな」
そうつぶやくと部屋に向かって少しずつ歩いて行きました。途中、台所からため息が聞こえてきます。そっと中をのぞくと両親の姿が見えます
「和輝にもっと良い治療をうけさせてあげたいけど、やっぱり無理かな」
お母さんはそういってうつむき涙ぐんでいます。お父さんも辛そうな顔で
「うーん」
と言ったまま腕を組んでいます。
「お…お母さん、お父さんごめんなさい」
和輝はつぶやくと部屋に閉じこもりました。部屋に鍵をかけパソコンの前に座りました。カチコチカチコチ。時を刻む音だけが静かに聞こえてきます。
『神様、どうか僕の元にも幸せを呼ぶ青い鳥が来てくれますように…』
夕日が沈んだ暗い部屋の中で一人うつむいていると
「ピンポーン」
再びメールの着信音がなりました。送信者はやはり青い鳥からです。
「大空和輝君。外は歩いてきたかな?幸せは見つかったかな?」
和輝はすがるような気持ちでメールを返信しました。
「メールをくれた青い鳥さん、僕を励ましてくれてありがとう。言われた通り、外に出てみました。でもみんなの視線が気になって、僕を馬鹿にしているように見えます。お父さんもお母さんも疲れ切っているし、僕にはどうしたらいいのか分かりません。もし青い鳥が本当にいるのなら僕の元に来てほしい」
和輝は疲れ、ぐったりしながら
『このメールを送ってくれる、幸せを呼ぶ青い鳥って一体誰なんだろう』
和輝は時が止まったかのような静かな部屋で一人考えこんでいました。静寂の中
「ピンポーン」
またメールの着信音が鳴りました。和輝は急いでメールを開きます。
「大空和輝君へ。君のようにこの病に苦しんでいる人々は沢山いる。その人たちも君と同じように悩み苦しんでいる、苦しさを分かち合える仲間は世界中にいる。だから将来、君にはきっと沢山のお友達ができるだろう。お父さん、お母さんは君の事をとても心配している。お父さん、お母さんに感謝しなさい。おまえを命がけで守ってくれているのは、お父さんとお母さんだから」
和輝はメールを何度も読み直しました。
『青い鳥は何故、僕の事をこんなによく知っているのだろう?』
和輝はいくら考えてもわかりません。思い切って家族に聞いてみる事にしました。

▲▲▲▲ 2015年3月29日 前半 完結 ▲▲▲▲

■ 前半 第1話
URL:http://douwachan02.blog.so-net.ne.jp/2015-03-22

■ 前半 第2話
URL:http://douwachan02.blog.so-net.ne.jp/2015-03-24

■ 童話制作委員会 掲載予定HP
URL:http://douwaseisaku.ie-yasu.com/SAKUHIN-fream.html

オリジナル童話【青い鳥がくれた不思議なメール(前編)】第2話 [創作童話]

青い鳥がくれた不思議なメール(前編).png ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
作品名:青い鳥がくれた不思議なメール(前編)第2話
作品番号:47
原 作:清原 登志雄
校 正:橘 かおる/橘 はやと
イラスト:姫嶋 さくら
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コツコツ。和輝が眠っていると窓をつつく音がします。目をうっすらと開け窓際に目を向けるとカーテンの隙間から美しい青い鳥が窓をつついています。
「幸せを運んでくれる青い鳥だ」
驚いて体を起こし青い鳥を見つめました。青い鳥はしばらく和輝の方を見つめていましたが、ヒュー。吹きさる風とともにそのまま飛び去ってしまいました。
「は!」
思わず体を起こしました。外をみると窓から夕日がさしています。
「もう夕方か、夢…だったのか。不思議な夢だったな」
和輝が、ベッドから降りるとパソコンには新着のメールが届いていました。
「あれ?またメールが届いている」
メールを開くと送信者は青い鳥からです。恐る恐るメールを読んでみると
「大空和輝君へ。私は、君のことなら、なんでも知っている。君は、多くの悲しみを知っているからこそ輝く人生になる。苦しみに負けず幸せに生きようとするなら、君は間違いなく幸せになれる。なぜなら、悲しみを知っている君のからこそ君の人生はすばらしいものになるからだ。送信者、幸せを呼ぶ青い鳥」
和輝は今までに感じたことの無い不思議な気持ちでメールを見つめていました。
「君の事なら何でも知っている・・・悲しみを知っている僕の人生は素晴らしい」
和輝はうなりながら
『不思議な言葉だ…このメールの送り主は一体誰だろう?』
和輝は思い切って、青い鳥に返信してみる事にしました。
「どうして、青い鳥は僕をそんなによく知っているのですか?どうして僕にメールをくれたのですか? 僕なんかに未来なんてあるはずが無いのに。きっと自分は脳の病気で死ぬんだって思っています」
和輝はメールを返信しました。しばらくカーテンの窓から差す夕日を眺めていると
「ピンポーン」
メールの着信音がなりました。
「また、青い鳥からだ」
早速、メールを開きます。
「大空和輝君へ。君は今、ひどく落ち込んで悩んでいるようだね。>どうして、僕の事をそんなに知っているの?
<私は君がウィリス動脈輪閉塞症という病に悩んでいることも知っている。そして、君はウィリス動脈輪閉塞症が治らず、どうすれば良いのか、苦しんでいる事も知っている。君はそんな中、自分を見失い、部屋に閉じこもってしまった。でも人生をあきらめず、なんとか生き抜こうと頑張っているようだね。だからこそ、君が生きている今日は世界のどんな記念日よりもすばらしいのだ。苦しさの中の積み重ねがすばらしい人生を生むだろう」
「>僕になんか未来なんかあるはずが無い<君は多くの人々から愛される必要があるから生まれてきた。だから私も君にメッセージを送っている。自分は必要のない命だと考えているかも知れない。それでも君は一生懸命に生き、最後には愛される命になるだろう。だからこそ君はみんなから必要とされるには、どうすればよいのか考えて欲しい。最初からあきらめるのはもっともつまらない人生だ」
「>脳の病気で死ぬんだって思っています<君が、多くの人から愛されたい。そう強く願うなら、君は素晴らしい人生を生きる事が出来る。私は君にその力があると信じている。君の運命は君自身が決めることだから。さあ部屋に閉じこもっていないで、外に出てみよう。君を受け入れてくれる人々はきっと見つかる。そして、君が希望を持って人生を生きようとするなら、無限の可能性を秘めた青い鳥を手に入れたようなものだ。とにかく、少しだけでも外を歩いてきてみよう。帰ったらまたメールがほしい。幸せはもうそこまで来ているのだから」
和輝は夢中になってメールを読んでいました。
『本当に不思議なメールだ。医学にも詳しいし…このメールをくれたのはお医者さんかな? お父さんがお医者さんにメールを送るように頼んだのだろうか? ウィリス動脈輪閉塞…もやもや病の別名かな?』
和輝はぼんやりとカーテンから差す夕日を眺めていました。
『外を歩いて来なさいか。ひょっとしたら庭に幸せの青い鳥が来ているのかもしれない』
和輝は恐る恐る玄関のドアをゆっくりと開けました。外からは春の暖かい風が入ってきます。
「長いこと閉じこもっていて分からなかったけど、もう春なんだ」


~ 前編 第3話に続く ~

■ 第1話 青い鳥がくれた不思議なメール(前編)
URL:http://douwachan02.blog.so-net.ne.jp/2015-03-22

▲▲▲▲ 2015年3月24日 ▲▲▲▲

青い鳥がくれた不思議なメール(前編)第1話 [創作童話]

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作品名:青い鳥がくれた不思議なメール(前編)第1話
作品番号:47
原 作:清原 登志雄
校 正:橘 かおる/橘 はやと
イラスト:姫嶋 さくら
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「お父さん、お母さん、優奈、こんな僕をいつも励ましてくれて本当にありがとう。和輝より」
カーテンが閉じられた薄暗い部屋の中で和輝は手をふるわせながらパソコンに向かい文字を打っていました。カーテンの隙間から朝日が差し込んでいました。
「僕のモヤモヤ病は一生治らないのかもしれない」
外では朝を告げるスズメがチュンチュンと鳴いています。
「もう、朝か、夜更かししちゃったな」
鳥の鳴き声を聞きながら本棚を見ると絵本、(青い鳥)が目につきました。和輝はその絵本を見つめながら 「この本には幸せを運んでくれる青い鳥は、すぐそば居るって書いてあるけど・・・僕のところには居ない。僕の元にも幸せがやって来るといいのに」
椅子にもたれかかりウトウトしていると
「ピンポーン」
メールの着信音がなりました。
パソコンを見るとメールが届いています。件名には
「人生は素晴らしい。感動することに意義がある」
と書かれています。和輝は不思議そうにそれを見ながら何度もつぶやきました。
「人生は素晴らしい…人生は素晴らしい」
しばらく考え込んでいましたが
『僕なんていつ死ぬかもしれない命だ。でも…感動する事に意義がある…か』
和輝は何故か件名にひかれ、そのメールを開いてみました。
「大空和輝君へ。君の人生は素晴らしい。君は幸せをつかみ、人々から愛されるために生まれてきた。君は幸せに生きるとは何か?よく考えてみるといいだろう。青い鳥は目には見えないが、人々に幸せをもたらす人のところへやってくる。送信者、幸せを呼ぶ青い鳥」
『僕は人々から愛されるために生まれてきた…青い鳥は目には見えないが、人々に幸せをもたらす人のところへやってくる』
和輝はもういちどメールを見ますが送信者のアドレスに思い当たりません。
『このメールをくれたのは一体、誰だろう?こんな文章が書かけるのはお父さんかな?』
和輝はしばらく考えていましたが、やはり青い鳥のメールアドレスには見覚えがありませんでした。和輝はメールを気にしつつもベッドでいつの間にか眠ってしまいました。

~ 前編 第2話に続く ~

▲▲▲▲ 2015年3月22日 ▲▲▲▲

シャルロットと魔法の花(後編) 完結編 [創作童話]

シャルロットと魔法の花もいよいよ完結。お楽しみください。シャルロットと兄、アレクサンドルとの兄妹の結末をお楽しみください。

シャルロットと魔法の花(後編).png
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 シャルロットと魔法の花(後編) 最終話
 企画・原作:清原 登志雄
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↑BGMを聞きながら読むと効果的です↑

夜になり、宮殿ではシャルロットがいなくなったと大騒ぎです。花を持ちフラフラになって帰って来たシャルロットを見た伯爵は、どこへ行っていたのかを問いただしました。シャルロットは申し訳なさそうに、
「お兄様を元気づけたくて、森の中に咲く魔法の花を探していたのです」
そう言うとフェアリーの魔法のかかった花を見せました。伯爵はシャルロットと花を交互に見つめていましたが、やがてゆっくりと抱きしめ、
「よし、わかった。そこまでアレクサンドルを慕っているなら明日、会わせてやろう」
その夜、シャルロットは、疲れていましたが、うれしくて中々ねむれませんでした。そして、あまり眠れないまま朝になると、花は少ししおれていました。シャルロットは、不安になりました。
『お兄様に渡すまでこの花は咲いているだろうか…』
その後、シャルロットとアレクサンドルは4年ぶりに再会しました。アレクサンドルに会ったシャルロットは魔法の花を渡しました。アレクサンドルは笑顔で、
「4年間、お前の事を、ずっと心配していた。この花を探しに行ってくれたんだって。本当にありがとう、大切にするよ」
そう話したとき、不思議な事が起こりました。しおれかけていた魔法の花が元気に咲き始めたのです。それはまるで、本当に魔法がかけられているように見えました。それから月日が流れ、病から回復し伯爵の位についた、アレクサンドルはこの国の発展をゆるぎないものにし、国民が幸せになれるようにと考えた政治を行いました。そして多くの民を困窮から救いました。その政治の手腕はまるで魔法のようでした。アレクサンドルの活躍を見つめていたシャルロットは、
「お兄様は幸せを振りまく魔法使いのようだわ」
そうつぶやきました。
「愛の魔法は不滅で人々に伝わっていくものなんだよ。尊い財産はあなたの中に宿る神そのものです。アレクサンドル様に主(あるじ)のご加護がありますように」
司祭さんの声が聞こえたような気がしました。アレクサンドルの民を思う気持ちが高貴な思いで咲く魔法の花にも伝わったかのようでした。伯爵アレクサンドルの側にある鉢には魔法の花が元気に咲き続けていました。

シャルロットと魔法の花(後編) 第2話
http://douwachan02.blog.so-net.ne.jp/2015-01-16

■ シャルロットと魔法の花(後編)全文 ■
(1月20日 掲載予定)
http://douwaseisaku.ie-yasu.com/SAKUHIN-fream.html

シャルロットと魔法の花(後編) 第2話 [創作童話]

シャルロットと魔法の花もいよいよ終盤です。お楽しみください。お兄さんの為に、がんばれシャルロット!

シャルロットと魔法の花(後編).png
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 シャルロットと魔法の花(後編) 第2話
 企画・原作:清原 登志雄
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↑BGMを聞きながら読むと効果的です↑

シャルロットは小人の案内で、森の出口に向かって歩き出しました。日がかげり、木々の陰が長く伸び、まるで悪魔が忍び寄るように見えました。シャルロットは疲れ果て、ただ黙々と歩き続けました。日がすっかり落ちた頃、森の出口が見えてきました。
「やっと出口が見えた。足が痛いわ」
ホッとした時です。何かが茂みの中で動いたような気がしました。小人が茂みに近づいて様子を見ていると、
「ガオー」
クマが現れました。
「きゃークマだ。お兄様、助けて」
シャルロットと小人は、クマを見ながら後ずさりをします。クマは2人に少しずつ近づいて来ます。シャルロットと小人は後ずさりをしましたが大木にドン。背中をぶつけてしまいました。シャルロットは花を抱きしめ、
『お兄様、魔法の花を渡せずごめんなさい』
そう思った時、クマはシャルロットの目の前で歩みを止めました。キラキラと輝く、不思議な花のにおいをかいでいます。クマはしばらく魔法の花を見つめていましたが、魔法の花の力で心が落ち着いたのでしょうか。そのまま森の奥へ帰って行きました。
シャルロットと小人はため息をつき森の出口へと急ぎました。森の出口が見えてくると、小人は、やれやれといった様子で、
「お嬢様、今日は大冒険じゃったな。その花でお兄さんを励ましてやりなされ、相手を思いやる気持ちこそが大切な宝じゃからのう」
シャルロットは笑顔で、小人の手を握り、
「小人さんが助けてくれたお陰で、花を探す事ができました。本当にありがとうございます。あなたのことは忘れません」
小人に別れを告げ、シャルロットが宮殿に向かった頃、辺りはすっかり暗くなっていました。

~ 後編 完結編に続く ~

シャルロットと魔法の花(後編) 第1話
http://douwachan02.blog.so-net.ne.jp/2015-01-09

シャルロットと魔法の花(後編) 第1話 [創作童話]

さあ、2015年もスタート!今年も新作をドンドンと書いていきますね。今年はなんだか変化が多くて忙しい年になりそうです。それではシャルロットと魔法の花(後編)をお楽しみください。

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 シャルロットと魔法の花(後編) 第1話
 企画・原作:清原 登志雄
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↑BGMを聞きながら読むと効果的です↑

フェアリーを見たシャルロットは思わず、声をかけました。
「あ…貴方は、もしかしたら花のフェアリーさん…どうか逃げないで下さい。大切な話があるの」
声をかけると、驚いたように、その生き物はこちらを見ました、小人はゆっくりとフェアリーに近づき、
「こちらのお嬢様は、お兄さんの病気を治したくてこの森に咲く、魔法の花を探しに来たのです」
羽のついた生き物は2人をジロジロ見つめていましたが、
「わかったよ。確かに私は、この森に住むフェアリーです。今、座っていた花には幸せになる魔法がかかっています。お嬢さん、その赤い花を咲かせてごらん。あなたのお兄さんを思う気持ちが本物ならね」
そう言われてシャルロットは、ゆっくりと、赤い花に手をふれました。でも花は中々咲いてくれません。
『どうしよう…花が咲かない。何かが足りないんだわ。お兄様に対する思いかしら』
シャルロットは幼い頃、アレクサンドルと楽しく遊んだ、日々を思い出しました。水遊び、広い庭で仲よく共に遊んだ事。朝早く肩を並べて教会に出かけた日々。色んな思い出が次々と脳裏によみがえってきます。シャルロットは懐かしさから涙がこぼれてきました。
『お金より大切な魂の価値こそ人々が求めているものなのかもしれない。幸せは魂の持つ神聖な思いによって導かれているような気がする』
シャルロットの涙が花のつぼみにふれると、花はキラキラと光ってゆっくり咲きました。花が咲いた様子を見てフェアリーは、
「お嬢さんは、確かに素晴らしい心の持ち主みたいだね。いいよ…それだけお兄さんを思う気持ちがあるなら、その花をもっていくといいさ。花が咲いたし、神様にあなたの魂が届いたみたいだから」
シャルロットは嬉しそうにフェアリーに頭を下げました。フェアリーは、
「本当にあんたはいい子だね。あんたの元で暮らせる家族や国民はきっと幸せになれると思うよ」
そう言うと、フェアリーは森の奥へと消えていきました。小人はシャルロットが笑顔で花をうれしそうにながめる様子を見て、
「さあ、お嬢様、このままだとすっかり日が暮れてしまいそうだ、早く帰りましょう。森の出口まで案内しますよ」

~ 後編 第2話に続く ~

シャルロットと魔法の花(前編) 第2話
http://douwachan02.blog.so-net.ne.jp/2015-01-02

シャルロットと魔法の花(前編) 第2話 [創作童話]

謹賀新年。2015年こそは童話制作委員会にとって躍進の年となりますように! 今回も新作童話【シャルロットと魔法の花(前編) 第2話】を、お届けします。
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シャルロットと魔法の花(前編) 第2話
企画・原作:清原 登志雄
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↑BGMを聞きながら読むと効果的です↑

お母様は笑って、
「ふふ…シャルロット、それはただの言い伝えよ。そんな魔法のような花があるのなら、この国の多くの人々は貧困から立ち直っているでしょう。その花があれば、きっと国民は豊かで幸せになっていますよ」
お母様に話をしても聞き入れてもらえないと感じたシャルロットは心の中で、
『1人で魔法の花を探そう』
と決めました。
ある日、シャルロットは魔法の花を探すため、1人で宮殿をこっそり抜け出し森に出かけました。森の中は薄暗く、シャルロットは心細くなりましたが、アレクサンドルが元気になった姿を思い浮かべ、奥へと駈けだしていきました。森の奥へ進む途中で古い苔むした丸太橋がありました。シャルロットが恐る恐る、丸太橋を渡り始めた時、ミシミシっとにぶい音がして、ボキン。丸太が折れてシャルロットは谷に落ちてしました。数分後、シャルロットは、ずぶ濡れになりながらようやく、岸に上がることが出来ました。しかし、谷でコンパスを落としてしまいこの先、どう進んだらいいか分からなくなってしまいました。
『どうしよう…道が分からない…お兄様、助けて』
心細くなり、メソメソ泣いていると、後ろから誰かが話しかけてきました。
「おやおや、こんなところでお嬢様が1人でどうしたのですか?」
シャルロットが振り向くとと、背丈が60センチぐらいでしょうか、小人のおじさんがこちらを見ています。小人に驚きながらもシャルロットは、
「フェアリーがかけた魔法の花を探しに森まで来たのですが、どこに咲いているのか分からないのです。それに森の出口も分からなくてしまって、困っています」
小人は心配そうに、
「フェアリーの魔法がかかった花ですか? きっと愛の心で咲く魔法の花を探しているのですね。見たところお嬢様なら、十分、裕福そうですが、どうして魔法の花を探しに来たのですか?」
シャルロットは寂しそうに地面を見つめて、
「お兄様が病気で困っているんです。お兄様を元気づける薬は、愛で咲く花だと思い、探しに来たのです」
清流がサラサラと流れる音を聞きながら小人はしばらく考え込んでいましたが、やがて、うなずき
「お嬢様の思いはよく分かりました。だが、この森では時々、クマがでます。私が道案内しましょう。森の奥にフェアリーがいるときいた事があります。一緒に魔法の花をさがしてみましょう」
「ありがとう小人さん、本当に感謝します」
シャルロットは、ホッとしたように小人の手を取りました。小人は恥ずかしそうに笑うと、森の奥へ進んでいきました。1時間ほど歩いたでしょうか、日がかげってきました。その時赤い花のつぼみの上で休んでいる羽のついた髪の長い小さな生き物を見つけました。その生き物は光に包まれており、どこか神秘的でした。

~ 後編に続く ~

シャルロットと魔法の花(前編) 第1話
http://douwachan02.blog.so-net.ne.jp/2014-12-29

シャルロットと魔法の花(前編) 第1話 [創作童話]

もうすぐ新年があけますね。寒い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか? 今日から創作童話 第3回をお届け。新作童話【シャルロットと魔法の花(前編)】です。前半は全2回に分けてお届けします。

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シャルロットと魔法の花(前編) 第1話
企画・原作:清原 登志雄
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↑BGMを聞きながら読むと効果的です↑

昔々、ヨーロッパの小国、クリスタルレイン公国。この国の地方を治める伯爵の元で双子の兄妹(けいまい)が生まれました。兄の名はアレクサンドル、妹はシャルロットといいました。2人は仲良く幸せに暮らしていました。6歳の誕生日を迎えたある日、
『今は仲の良い双子だが大人になったらもしかしたら、爵位や資産を巡って争う事になるかもしれない…』
父である伯爵はそう考えて、嫌がる2人を引き離し、別々に育てる事にしました。好きな兄と引き離された、妹のシャルロットは寂しさが募っていました。
『お兄様はどうしているのかしら? 元気かな』
そんな思いを馳せながら4年の月日がながれました。シャルロットが10歳になったとき、兄のアレクサンドルの事がどうしても気になり専属のメイドに兄の近況を訪ねてみました。メイドは暫らく黙っていましたが、やがて言いにくそうに、
「アレクサンドル様はシャルロット様に会えなくなってから、元気をなくし病気になってしまったようです」
それを聞いたシャルロットはショックのあまり部屋に閉じこもって考え込んでしまいました。
「お兄様に会いたい。また元気なお兄様に戻ってほしい。私に何か出来ることはないだろうか?」
俯き、部屋で独り言をつぶやいていると、コンコンとドアをノックする音がしました。ドアが開きシャルロットのメイドが心配そうに部屋に入ってきました。
「シャルロット様、アレクサンドル様を心配するお気持ちは分かりますが、あまり心配なさらないほうがよろしいかと…。シャルロット様が明るく、朗らかに振る舞えば、アレクサンドル様の病状も回復が早いのではと思います。きっとシャルロット様の思いがアレクサンドル様にも届きますよ」
その時、シャルロットの心の中で幼い頃、司祭さんから聞いた、不思議な言い伝えを思い出しました。それはアレクサンドルと一緒に町の大きな教会に出かけた時の事です。司祭さんが、
「人間の世界では身分が重要と思われていますが、神の前では愛と道徳心こそがもっとも大切なのです。愛と親切な心があれば人々は集まってきます。そして目には見えない、尊い財産を手に入れる事が出来るでしょう」
シャルロットはその話を聞き、司祭さんに訪ねました。
「司祭様、尊い財産ってなんでしょうか?」
司祭さんは笑顔で、
「我が国の森にはわが主(あるじ)、神様より使わされた、フェアリーが住んでいるとの話です。フェアリーが住む森には魔法のかかった不思議な花があると聞きます。愛を持ち人徳の高い方がその花を手にすると、わが主(あるじ)から本当に大切な財産を授かることができるという言い伝えがあります。大きな財産があり、人間世界では身分が高くても主(あるじ)の加護がないと寂しい人生を歩む方も多いのがこの世の事実です」
その言い伝えを思い出し、シャルロットはアレクサンドルの病いを少しでも癒そうと、魔法の花を探すため、お母様に聞いてみました。

~ 第2話に続く ~

■ 前作(エメラルドスターの英雄 完結編) ■
http://douwachan02.blog.so-net.ne.jp/2014-12-22

エメラルドスターの英雄(完結編) [創作童話]

全国文芸ファンの皆様、いつも当ブログを閲覧いただきありがとうございます。いよいよ【エメラルドスターの英雄の最終話】完結編をお楽しみください。
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エメラルドスターの英雄 第3話
企画・原作:清原 登志雄
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↑読書中のBGMにお使いください↑

王は静かに威厳ある声で、
「わざわざエメラルドスターまで出迎えご苦労だった。だが、お前のような小国の王子などに娘は渡せない」
王子に婚約の断りを入れようとしたときです。大臣が息を切らしてやって来ました。
「王様、会談中に申し訳ありません。大変です」
「どうした? 騒がしい」
「暖かくなったので、農地に食料用の穀物を植えたのですが害虫が大量に発生して大きな被害が出ています。このままだと、今年は飢饉になるかもしれません」
王は驚いて、
「何、それは大変だ。農夫達だけで害虫の駆除はできないのか?」
「王様、恐れながらそれは困難と思われます。今年はどうした事か異常に害虫が大量発生しています」
その時、フィアナにクッキーをもらった鳥がバタバタと木から下りてきました。鳥は王に頭を下げると、
「王様、私は真冬にフィアナ様にクッキーを頂き命が助かりました。私は、フィアナ様もフィリップ王子も立派な方であることを知っています。結ばれればきっと2人は幸せになり両国の友好関係を築くことが出来ると思います。そこで王様に提案です。私たちの仲間が、農地を荒らす、害虫を退治しますので、もし農地がよみがえったらフィリップ王子と、フィアナ様の結婚を認めてあげて下さい。王様に民を思う気持ちがあるのなら…」
王様は考え込んでしまいました。フィアナは、
「お父様、私からも、お願いします。もし農地が荒れてしまえば国民が飢えるかも知れません。どうか鳥さんのお願いを聞いて下さい」
しばらく考えてから王様はうなずきました。すぐに鳥は仲間を連れて農地へ飛び立っていきました。
1週間後、農地の害虫は鳥たちによって退治され、穀物は元気を取り戻しました。農夫達が安心して農作業に従事している様子を王は、黙って見つめていました。
数ヶ月後、フィリップ王子とフィアナ王女は結婚しました。結婚式は盛大に挙げられ、エメラルドスターの農夫達はフィアナ王女を、
「我が国を飢饉から救った英雄」
と、讃えました。
その後、フィアナとフィリップの間に子供が生まれ2人は幸せに暮らしました。フィリップ王子の妃となったフィアナは幸せそうに赤ん坊を見つめて、
「お母様、ありがとう。今、私はとても幸せです」
とつぶやくと、赤ん坊が声をあげて笑いました。その後、エメラルドスターと隣国、フィリアス島との友好関係は末永く続き、両国民は幸せに暮らしたということです。

▲▲▲▲完結▲▲▲▲

第2話はこちら↓
http://douwachan02.blog.so-net.ne.jp/2014-12-19

<完成版掲載予定のHP>
http://douwaseisaku.ie-yasu.com/

エメラルドスターの英雄 第2話 [創作童話]

全国文芸ファンの皆様、いつも当ブログを閲覧いただきありがとうございます。引き続き【エメラルドスターの英雄の第2話】をお楽しみください。
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エメラルドスターの英雄 第2話
企画・原作:清原 登志雄
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↑BGMをお使いください↑

フィアナが窓を開けると鳥が覗いて、
「こんな真冬にスミマセン。今、外では食べ物がないんです。空腹で死にそうです。何か食べさせて頂けないでしょうか?」
「まあっ。こんな寒い中、食べる物が無いなんて…何か食べ物があるかしら…」
あたりを見回すとクッキーが残っていることに気がつき、こんな物でよければと鳥にクッキーを差し出しました。鳥は、よほどおなかがすいていたのでしょう。夢中でガツガツとクッキーを食べました。クッキーを食べ終わった鳥は、うれしそうに、
「お姫様、ありがとうございます。おなかがいっぱいになり助かりました。お礼がしたいのですが、私でできる事があれば何でも言って下さい」
フィアナの顔が思わず、ほころび
「鳥さん、私はフィリアス島のフィリップ王子を愛しています。しかし、お父様が厳しくて、フィリップ様に手紙を出すことすら許してもらえません。今から手紙を書くのでフィリップ王子に渡して頂けませんか?」
鳥はうれしそうに、
「おやすいご用ですよ。ここから30分ぐらいでフィリアス島まで行けますから」
フィアナは急いで手紙を書き終えると鳥の足にくくりつけました。鳥はフィアナが足に手紙をくくり終えると、バタバタと羽ばたいていきました。こうして鳥の協力でフィリップ王子とまた文通をする事ができ、季節は春になりました。
春になったエメラルドスターには、雪解けの清流が流れ、あちこちで花が風にゆれています。農夫達は畑に穀物の苗を植え始めました。
エメラルドスターの雪解けを知ったフィリップ王子は決心しました。
『フィアナをなんとしても妃として迎えたい。雪が溶けた今ならフィアナを迎えに行くことが出来そうだ』
フィリップ王子は、エメラルドスターへやってきて、王にフィアナを妃として迎えたいとお願いをしました。

▲▲▲▲次回に続く▲▲▲▲

エメラルドスターの英雄 第1話はこちら↓
http://douwachan02.blog.so-net.ne.jp/2014-12-15

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