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感謝のおにぎり 第1話 [創作童話]

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作品名:感謝のおにぎり 第1話
作品番号:49
原 作:清原 登志雄
校 正:橘 かおる/橘 はやと
イラスト:姫嶋 さくら
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昔々、東北地方の山間に貧しい農村がありました。梅の花がつぼみをつけ始めた頃、この村では食べ物がなく村民は困っていました。
この貧しい村に父と娘の親子が住んでいました。娘は幼いころ、母を病で失い、今また、父も病気で寝込んでいました。その病の父の世話を娘が1人でしていました。
「おとう、おかゆが出来たよ、食べてくれ」
差し出されたおかゆを見ながら、父はすまなさそうに、
「スズ、いつも心配ばかりかけてすまないな。ありがとう」
そう言っておかゆをすすりました。その様子をこっそりと、家の外で見つめる、老婆の姿がありました。
数日後、スズの家では、米びつの底が見えてきました。困ったスズは村人にお米を分けてもらえるよう頼んで回りましたが、この季節はどの家も食べ物がありませんでした。
夕日が射す中、スズはうなだれ、家路を歩いていました。庄屋の家の前を通りすぎた時の事です。庄屋さんは立派な着物を着て、息子さんは洋服を着ていました。
家に帰ると、スズは台所に行きましたが、米や野菜はもう2~3日分しか残っていません。スズは、村民から冷たく追い返された悲しみと、庄屋の幸せそうな様子を思い浮かべていました。ぼんやりと、台所に射す夕陽を眺めながら
『いつになったら、この貧しい生活から抜け出せるのだろうか? こんな貧しい自分を必要としてくれる人なんて、この世にいるのだろうか』
翌日の真夜中でした。庄屋の蔵で何か物音がします。庄屋と息子は起き出し、音がする蔵へ近づいてみると、誰かが米を持ち出そうとしていました。
「この、盗人め」
2人が取り押さえると、それは、スズでした。

▲▲▲▲ 2015年4月14日 次回に続く ▲▲▲▲

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